30歳になったら静岡県!

Uターン

杉村有沙美さん

すぎむら あさみ

焼津市

静岡県焼津市出身。東京農業大学短期大学部栄養学科卒業。新卒で加工食品メーカー・SSKセールス株式会社に入社。商品開発部で加工品開発に携わり、現在3年目。

東京の短大を卒業後、Uターンを決めた理由
「大好きな“食”に携わることが、決め手になった」

東京農業大学短期大学部栄養学科を卒業後、静岡市に本社を置くSSKセールス株式会社へのUターン就職を決めた杉村さん。もともと地元に帰ろうと決めていたわけではなく、進路を決める上で優先したのは「食品に携われる仕事かどうか」だった。
「就職活動では、食品メーカーの商品開発職を中心に、勤務地にこだわらずに企業を見ていました。あるとき、『商品開発』の職種別採用を行っている企業を発見。それが、SSKセールスでした。地元企業だったことに加え、入社後に確実に商品開発職に就けることが魅力でしたね」

食への関心が明確になったのは高校時代。担任の先生に「将来やりたいことが見つからない。食べることが好き、というくらいしか明確なことがない」と話したところ、「じゃあ、まずは栄養士について調べてみたら?」というアドバイスが返ってきた。言われた通りに調べ始めたことが、栄養学に興味を持つきっかけになった。また、その進路学習の中で商品開発という職種があることを知り、「この道に進みたい」と栄養学科への進学を決めたという。 「静岡県内の大学進学も選択肢の一つにはありましたが、東京農業大学のオープンキャンパスに行き『ここに行きたい』と心奪われました。都心の中の緑あふれる環境がとても素敵だったんです。2つ上の姉が東京の大学に進学していたので、『2人暮らしをする(家賃の負担を増やさない)』と両親と約束し、上京を決めました」

短大では栄養士の資格取得を目指しながら、食品科学のゼミに所属。ブレッドフルーツ(パンノキ)の加工食品開発の研究に没頭した。東京での就職も選択肢に入れていた一方、学内のUターンセミナーに参加して情報収集するなど、東京、静岡の周辺で「商品開発に携われる仕事」を幅広く探していたという。 「東京での学生生活は刺激にあふれて楽しくて、このまま東京で働くのもいいなと思っていました。だから、私の選択は仕事ありき。SSKセールスの『住み慣れた実家から通える範囲で、やりたい仕事ができる』という選択肢に出合えたことが、Uターンの決め手となりました。実家に戻るというのは、自立する上ではよくないと考える人もいるかもしれません。でも、社会人のスタート時期に、親というもっとも身近な人生の先輩からいろんなアドバイスをもらえる環境は、私にとっては貴重なものでした。仕事を終えて、親がいる場所に帰るとほっとできて、また翌日から頑張ろうと思える。それはUターンして、改めて感じたことでした」

現在、商品開発部に所属し、新商品の原料の選定、配合検計、サンプル試作、栄養成分表記のリサーチ、工場への製造仕様書作成など、商品化に向けた一連の業務を担当している杉村さん。自分が携わったものの商品化が決まり、実際に店頭に並べられたときは大きな達成感があるという。 「地元の友人に『こんな商品ができたよ』と話して、実際に買ってもらえるのがうれしいですね。静岡の会社だからこそ、周りの認知度も高いなと感じます」

Uターンしたからこそ感じる、地元の魅力
「電車から見える景色に、心ほぐされていく」

片道約1時間かけて実家から通勤している今、一度地元を離れたからこそ、それまでは当たり前だと思っていた景色にも、よりありがたみを感じるようになったという。
「中学時代から今も、ずっと同じ電車を使っているのですが、電車から見る景色に毎日心がほぐれていく気がします。遠くに海も山も見えるのは静岡ならでは。空がどこまでも続く景色を眺めていると、日々の悩みがちっぽけなもののように思えてくるから不思議です。休日に、実家の窓から田んぼをぼんやり眺めている時間も好きです。田植えが終わったり収穫が始まったり、季節の移ろいを田んぼの様子から感じとれる。こういう時間が好きだったんだなと、今になって気づいています」

学生時代とは食生活も一変。地元の野菜や新鮮な魚を使ったご飯を食べることで、食事で健康になるということを、より意識するようになった。
「食費などの実費を家に入れているので、学生時代にかかっていた食費と大きく変わりません。でも、質は全然違いますね。むしろ食べ過ぎているのが気になります(笑)」

地元に戻ってくると知った家族や周囲の反応
「あなた次第、といういい距離感」

東京に進学するときも、Uターンで戻ってくると伝えたときも、家族は「自分が後悔しないように選択しなさい」と背中を押してくれたという。
「親は常に、地元を離れてやりたいことがあればやればいいし、地元でやりたいことがあるなら戻ってくればいい、といっています。“あなた次第”というスタンスで接してくれるのはありがたいです。姉は全国転勤がある会社に勤めて地元を離れているので、私が戻ってきてうれしいんじゃないかなと、ひそかに思っています(笑)」

Uターンをして不便さを感じる点といえば、実家が最寄りの駅からバスで15分と離れていること。終バスも早いため、会社の飲み会などで帰宅が遅くなると、両親のどちらかに車で迎えをお願いすることもあるそうだ。
「でも、いつまでも甘えていちゃいけないと、1時間かけて歩いて帰ることも。のんびり考えごとをしながら田舎道を歩いていると、いい運動にもなって酔いもさめてちょうどいい。家に帰れば家族がいるあたたかさに支えられています」

Uターンを考えている人へのアドバイス
「優先順位を自分で決めて動くことが大切」

地元に戻って働いている今も「東京で就職したらどんな生活だったのだろう」と考えるときはあるという。どんな道に進んでも、迷うことはある。だからこそ、自分の優先順位を明確にしておくことが大切だという。
「私が優先したのは、やりたい仕事ができるかどうか、でした。どんな選択をしてもいいけれど、自分にはこんな思いがあったからこの道を選んだ、と思えるようにじっくり考え抜くことが大事。周りの意見は聞きながらも流されないで“自分で”決めてほしいなって思います。私は結果的に大好きな家族との時間もとれるようになって、幸運でした」

仕事面では、まだまだ「本当におすすめしたい商品の開発はできていない」と話す杉村さん。しかし今後、商品開発部以外の部署で学びたいことが出てくれば、県外勤務も柔軟にチャレンジしていきたいそうだ。
「今の会社で、場所を狭めずに広い視野をもって仕事をしていきたい。でも、最終的に戻ってきたいのは静岡ですね。時間の流れが自分に合っていて、この地から元気をもらえる気がするからです」