30歳になったら静岡県!

Iターン

江川詩織さん

えがわ しおり

浜松市

東京都多摩市出身。社会福祉法人聖隷福祉事業団 保健事業部 地域・企業健診センター 運営管理課所属。都内の高校卒業後、静岡県浜松市の専門学校に進学。東京で医療事務などを経て、2016年4月から現職。

浜松市へのIターンを決めた理由
「専門学校への進学が、人生のターニングポイントになった」

静岡県浜松市は、江川さんにとって「第二の故郷」だった。東京都多摩市の高校を卒業後、地元を離れて進学したのが、浜松市にある楽器修理の専門学校。1年間の寮生活で、浜松の人のあたたかさ、居心地のよさにすっかり魅了され「いつかここに住みたい」と思うようになったという。
「専門学校に進んだのは、管楽器の修理士になりたいと思ったからです。中学、高校と吹奏楽部に入っていて、『演奏者として音楽に携わるのは難しくても、修理士として誰かの役に立ちたい』と考えるようになりました。そこで、ヤマハや河合楽器製作所、ローランドなど楽器メーカーの本社が数多く集まる、“音楽・楽器のまち”浜松で、専門的な知識をつけようと進学を決めました」

専門学校を卒業後、実家に戻って楽器店に就職するも、仕事で音楽に携わる厳しさを痛感して、その道を断念。ただ浜松の地で生活したいという思いだけは揺らぐことがなかった。
「浜松で過ごした1年間で、心許せる友人もたくさんでき思い入れのある場所になりました。海も山も近くにある自然の豊かさ、人のやさしさ、街を包む穏やかな雰囲気が、私にはとても合っていました。いずれ実家を出て自立するときは、都心ではなく、馴染みのある浜松で一人暮らしをしたいと考えるようになり、“Iターン”準備として20代を東京で有意義に過ごそうと思ったんです。すぐに医療事務の資格を取得し、スキルや経験に基づいた仕事のノウハウを身につけようと、都内の総合病院に勤務。5年半ほど勤め、Iターンのための資金もコツコツと集めました」

Iターン準備期間にやったこと
「静岡U・Iターン就職サポートセンターを利用し半年かけて情報収集」

Iターンに向けて具体的に動き始めたのは29歳のとき。目標としていた貯金額に近づき、30代を前にやりたいことを実現したいと考えるようになったという。
「まず始めたのは、浜松市での仕事探しです。訪れたのは、東京都目黒区にある『静岡U・Iターン就職サポートセンター』。就職支援を行う静岡県の機関で、キャリアカウンセラーが親身に話を聞いてくれました。ほかにもハローワーク主催の静岡県内の就職フェアや、有楽町にある『ふるさと回帰支援センター』に足を運び、半年ほどかけて浜松市内の就職情報を集めました」

現在の勤務先は、目黒の静岡U・Iターン就職サポートセンターからの紹介を受け、企業の健診を担当する仕事内容に興味を抱いたという。
「東京で医療事務をしていたとき、患者さんの受診履歴を見る機会が多くありました。すると、健康診断の再検査によってガンが見つかる、というケースが非常に多かったんです。病院として、病気を治すことも大切ですが、健康診断によって病気を事前に食い止める役割もまたとても大事だと考えるようになりました。オファーを受けた今の仕事は、まさにその“未病”に携わる、企業や団体などへ健康診断をスムーズに導入するための調整業務。やりがいを持ってできると感じ、転職とIターンを決めました」

2016年3月に転職先が決まると、すぐに住居探しを始めた。浜松の不動産屋さんに行くと、1日目で条件を満たす物件に出合い、その場で即決。仕事が決まった1週間以内に、住む場所も決まったそうだ。
「住まい探しで重視したのはアクセスの良さ。実家に帰る機会も多いと思ったので、駅から近い物件を探していました。決めた家は、一人暮らし用のアパートで、家賃は管理費込で4万2000円。予算内に収まり、Iターンに向けて物事がトントンと進んでいきました」

Iターンしてよかったこと
「やりたかったことを叶えた自信が、視野を広げてくれた」

東京で働いているときから、浜松や県内の友人に会いに数カ月に一度のペースで遊びに来ていたという江川さん。専門学校時代にできたコミュニティもあり、Iターン後に人間関係の面で大変さを感じることはなかったという。生活面で実感したのは「車がないとどこにも行けない」こと。最初は電車やバスなどを使っていたが、路線の種類や本数が限られ、なかなか自由に動けなかった。そこで、引っ越し3ヵ月後に車を購入。行動範囲がぐんと広がり、休日の楽しみも増えたという。
「静岡県内のおいしいものを食べに車を走らせることも増えました。土曜日は、所属している吹奏楽サークルの練習があるのでそこに参加し、日曜日は好きな場所に出かけています。休日はどうしても外食が多くなってしまうので、平日は自炊しお弁当も作るなど、メリハリをつけて静岡の食を楽しんでいます。食べ過ぎてもいいように、通勤は自転車です(笑)」

いつか浜松で生活するという目標に向け、着実に準備をして思いを叶えた江川さん。地元を離れ、一人でやるべきことを一通りしてきた自信が、行動力やチャレンジ精神につながっていると話す。
「自分が動けば、情報が舞い込み、人とのつながりができて、見える風景が広がっていく。それが、Iターンをしようと動く中で実感したことです。新しい場所や人、仕事の出会いを楽しんでいる自分を発見して、視野が広がったかなとうれしくなります」

現在は、2~3ヵ月に1回の頻度で実家に戻り、両親、妹との家族団らんも大事にしているという。
「浜松にIターンすると決めたときは、『前から行きたいって言っていたね』とあっさりと送り出してくれた両親でしたが、引っ越してしばらくしてから話を聞くと、少し寂しさがあったみたい。実家がある多摩も、浜松も自然豊かで雰囲気が少し似ているんです。好きな故郷が二つあるみたいで幸せですね」

Iターンを考えている人へのアドバイス
「一歩踏み出せば、人生の選択肢はたくさんあると気づく」

現在、企業や事業所での健康診断の調整業務を担当している江川さん。受診する一人ひとりの健康につながる仕事内容は、「誰かの役に立ちたい」という江川さんの思いとマッチしている。
「 Iターンというと、田舎暮らしや起業など、壮大な決意で行動するケースをイメージしがちです。でも私みたいに、住みたいと思っていた場所で仕事を見つける、というごく普通の転職事例もあります。移住は人生の一大決心ではあるけれど、一度住んでもまた違う場所に引っ越せますし、そんなにハードルの高いものでもありません。移住(Iターン)に関する就職フェアや、情報発信をしている相談センターも多くありますので、興味を持ったらまずは足を運んでみることが大事だと思います。話をしていると、自分が思っていたよりも多くの選択肢があると気づきます。今いる場所以外で仕事を探す、住まいを探すという道があることをフラットにとらえ、じゃあどこに住みたいだろう…と考えてみる。もっと気軽に、自由に動いてもいいんじゃないかなと思います」

今後、ライフイベントの変化がどう起ころうと、「静岡に住み続けたい」ことだけは明確だと話す江川さん。
「高校を出たあとに普通に都心の大学に行っていたら、こんな人生はなかったでしょう。あのとき浜松を選んで1年間過ごしたから今がある。多摩市も浜松市も大切な地元で、私にとって帰れる場所。自分なりの“居心地のいい故郷づくり”を、これからもっと深めていきたいですね」