30歳になったら静岡県!

Uターン

油井信明さん

ゆい のぶあき

静岡市

1983年、静岡県焼津市生まれ。高校卒業後、千葉県内の大学に進学。卒業後は横浜市内の食品検査会社に就職。2017年9月に静岡市にUターンし、一般財団法人静岡県生活科学検査センターに勤務。隣接する静岡市出身の妻と4歳の娘、1歳の息子の4人暮らし。

静岡を離れて約15年。なぜUターンしたのか
都会での共働きの「子育て」に感じた限界

かつて住んでいた思い出の地で、妻と2人の子どもと暮らしている油井さん。ただ、高校卒業とともに離れた地元に、当初は帰ってくるつもりはなかったという。

大学卒業後、新卒時から勤めていた横浜市内の食品検査会社では、主に輸入食品の品質・安全性検査を担当。大学時代の研究を活かせる仕事で、やりがいを感じていた。学生時代から交際していた現在の妻とも結婚し、公私ともに充実した生活を送っていたという。Uターンを考えるきっかけになったのは、共働きでの「子育て」の苦労に直面したからだった。
「1人目の子どもが生まれたとき、僕たちは共働きでした。しばらくは妻が育休をとって世話をしていましたが、育休が終わり、子どもを保育園に預けながら2人で仕事と子育てを始めると、すぐに両立の難しさに直面しました。保育園の送り迎えを2人で分担するのに苦労したり、娘が熱を出したときには僕か妻のどちらかが仕事を休まないといけなかったり…。予想以上の大変さに、静岡に帰れば両親に援助してもらえると、夫婦でUターンを考えるようになりました」

2人が高校の同級生で、同郷だったこともあり、今暮らしている静岡市内の自宅は、妻の実家から徒歩数分の場所にある。油井さんが生まれ育った焼津市も隣町で、気軽に行き来できる。そうして2017年9月にUターンし、油井さん一家の新たな生活が始まった。

転職の条件と仕事の見つけ方
「スキルを活かせる仕事を」。条件を絞った結果…

ただ、実際にUターンが実現するまでには苦労もあった。その1つが、仕事探しだ。「これまで培った経験を活かしたい」。油井さんは、とくに仕事の「内容」にこだわったという。複数の転職サイトに登録し、いろんなエージェントと会って会話を重ねた。ただ、専門的な職種であるがゆえに、なかなか条件に見合う会社が見つからなかったという。
「静岡でも同じように食品の検査・品質管理などを行っている会社を探したんですが、想像していた以上になかなか見つからず、最初はかなり落ち込みました。静岡では難しいのかな。そうあきらめかけた時期もありました」

それでも、油井さんは根気強くエージェントに掛け合い、求人を探し続けた。道が拓けたのは、転職活動を始めて1年ほど経ったころ。静岡県のUIターン支援窓口を通じて、条件の合う会社を見つけたのだという。

今勤めている静岡県生活科学検査センターでは、主に医薬品の検査業務を手がけている。静岡県は医薬品と医療機器の製造で全国一の生産額を誇る。「ここでなら経験を活かせる」。そう直感したという。
「『スキルを活かせる場所で』と条件を絞って探した分、少し時間はかかってしまいましたが、自分に合う仕事を見つけられて嬉しかったです。できるだけ多くのエージェントに会って、いろんなアドバイスや意見をもらうようにしたのがよかったんだと思います。前職とほぼ変わらない収入と条件で入社できたのも、大きかったですね」

地元就職してよかったこと、生まれた変化
仕事と家庭。「8:2」から「5:5」へ

Uターンして1年弱とまだ間もないが、変化はすぐに現れた。1歳の息子はUターンする前に生まれたばかりだが、横浜で暮らしていたときのような育児の苦労はない。
「今は妻の両親が徒歩数分の場所に住んでいるので、保育園の迎えも頼めますし、熱が出ても安心して面倒を見てもらえます。横浜にいたころ、夫婦だけで子育てしていたときと比べると、ストレスが全然違います」

静岡に戻ってきてからは、4歳になった娘と一緒に過ごす時間もずいぶん増えたという。
「以前は夜遅くまで仕事することも珍しくなく、帰宅するころには妻も子どもも寝ていました。妻が用意してくれた食事を、1人で食べる。そんな生活でした。一方、今の職場は自宅から自転車で約10分の場所にあり、平日も比較的早い時間に帰宅できます。家族で夕飯を食べたり、娘と一緒にお風呂に入ったりする時間をつくれるようになりました」

すっかり社会に浸透した「ワーク・ライフ・バランス」の概念。その割合の変化について油井さんに尋ねると、「以前は仕事が8割、家庭が2割くらいの生活でしたが、今は5:5に近いですね」との答えが返ってきた。
「今までは子どもと一緒に遊ぶ時間や余裕がなかなかありませんでしたが、今は違います。休日は公園で遊んだり、僕の実家の近くにある海に行ったりと、一緒に過ごせる時間が増えました」

Uターンしたからこそ感じる地元の魅力
海、山、川に囲まれた静岡。子どもとキャンプや登山

約15年ぶりに、生まれ育った静岡で生活を再開させた油井さん。戻ってきて改めて感じるのは、「海や山、川が近くにある」という静岡の自然の豊かさだった。今でもオフの日には子どもを連れて海へドライブに出掛けたりしているが、これからはもっと自然と触れ合う日々を満喫したいと考えている。
「自然が近くにあるので、車で気軽に海や山に出掛けられるのは嬉しいですね。近々、子どもを連れてキャンプや登山に挑戦したいと思っているんです。地元の大井川沿いにはキャンプ場があって、近くを走る大井川鐵(てつ)道ではSL(蒸気機関車)やアニメ番組で有名な『きかんしゃトーマス号』に乗れるんですよ。僕はこういう自然豊かな環境で育ったので、子どもたちにも同じように、自然に触れながら伸び伸び育ってもらいたいですね」

油井さんにとって、地元の仲間たちと心置きなく過ごす時間も大切だ。
「同世代の友人の家族と一緒にバーベキューをすることもあります。子育てについて情報交換できますし、お互い子どもの歳が近いので、子ども同士が仲良くなれるのもいいですよね。親しみがあるせいか、静岡に住んでいる人は心が穏やかに感じます。地元出身者が多い職場も、とても働きやすいですよ」

Uターンを考えている人へのアドバイス
10年、20年先の人生を考えて行動する

地元を離れたときは、予想もしていなかったUターン生活。でも今は、想像以上に充実した時間を過ごせている。だからこそ、もし「静岡に戻るかどうか」悩んでいる人がいるなら、伝えたいことがある。
「とくに若いころは都会の生活に憧れるし、その暮らしが楽しいと感じますよね。実際、僕もそうでしたから。でも、例えば5年、10年、あるいは20年先の人生を考えたらどうでしょうか。僕は静岡で35歳、40歳を迎え、その先も暮らしたかった。そうやって、どこかで一度立ち止まって考えてみるといいでしょう。すぐに決断できなくても、県のUIターン情報を定期的にチェックするなど少しずつでも行動しながら、いろんな人の意見を聞くことで自分の考えが見えてくると思います」

心にゆとりが持てるようになったからこそ、今後の人生プランも自然と浮かんでくる。まずは仕事。会社は食品の検査・分析にも今後力を入れていく方針のようで、そうなれば経験豊富な油井さんが力を発揮する場面が増えそうだ。さらに、「一戸建てのマイホームを建てたい」とも。この夢も、静岡に戻ってきたからこそ本気で描けるようになったという。油井さんの夢は、これからもどんどん膨らんでいきそうだ。